Keep It Simple, Stupid - iPodをつくった男
やっぱりこの人はすごい、というのがよくわかった気がします。
iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス
大谷 和利
iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス (アスキー新書 048)
- 作者: 大谷和利
- 出版社/メーカー: アスキー
- 発売日: 2008/01/10
- メディア: 新書
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過去20年以上に渡ってアップル社を見つめてきた筆者がスティーブ・ジョブスについて書いた本。彼とアップルの成功の一端が垣間見れます。
かつて、ジョブスはビジネスウィーク誌のインタビューに答えて、次のような主旨の発言をしたことがある。
「ユーザー調査を通して製品をデザインしていくことには、大きな困難が伴う。たいていの場合、消費者は、具体的な形にして見せてもらうまで、自分でも何が欲しいのかわからないものだからだ」
(p.54)
これは、彼がデータや過去にとらわれていないことがよくわかる表現。そもそも自分の音楽コレクションをすべて持ち歩くという発想がない時代では、ユーザーにはそのようなニーズはまず無い。何かが欲しいと思ってもそれが本当に欲しいものかどうかは本人もわかっていない。だからこそ、彼のようなビジョンや洞察力が必要なのですね。
ジョブスは、初代マックでも、初代iPod のときにもバリエーションは作らずに、"One decision. One box. One price." を貫いた。それは彼が、これまでにない先端的な製品を売り込むときこそ、訴求ポイントを絞ることの重要性を知っていたからに他ならない。
(p.126)
これは、KISS (Keep It Simple, Stupid) に通じるところがありますね。このことについては「シュガーマンのマーケティング30の法則」でも以下のように書かれています。
商品が多ければ多いほど、お客は選ばなければならない。お客にとって選択することは必ずしも簡単なことではないのだ。
(p.193)
セールスを簡単に行うには、お客があなたの提案を受け入れる以外に選択肢がないほど単純な提案をすることだ。
(p.196)
種類が多ければいいというものではないというのは、日々の生活で実感できます。なるべく単純に、悩まなくていいくらい単純に、というのがお客様に優しい考え方なのかもしれません。
The Computer for the Rest of Us.
このキャッチコピーは、初代マックの発売当初のキャッチフレーズとして有名なもので、同社の製品哲学を見事に集約している。直訳すれば「残りの人のためのコンピューター」。つまり、「今までコンピューターを使ったことのなかった誰もが使えるようなコンピューター」という意味である。
(p.146)
これは、先日のエントリで紹介した「トヨタ式世界を制した問題解決力」で書かれていたトヨタの市場の考え方に似ていますね。
たとえばシェアが四〇パーセントあっても、あぐらをかいてはいけない。「残り六〇パーセントのお客様はどうなっているんだ?」と視点を変える。こうして未来客を開拓してこそ、現在客もリピーターになってくれる。
さらに、「この市場は、よくわかっている」のではなく、「この市場外は、まるでわかっていない」と考えを進め、市場を支えている市場外要因を分析する。
トヨタ自動車なら、車を買わないお客様が発想の対象になる。
(p.25)
また、この考え方は「ブルー・オーシャン戦略」では、顧客以外の層に視線を向ける「非顧客層の3つのグループ」という考え方として取り上げられていましたね。
いずれにせよ、常識にとらわれ過ぎては新しいもの(アイデア、市場)は生み出せないということですね。
Stay Hungry, Stay Foolish.