斬新な切り口を見つける - みえないかたち
「感覚のデザイン」のために必要なモノってなんだろう?
- 作者: 吉岡徳仁
- 出版社/メーカー: アクセス・パブリッシング
- 発売日: 2009/04/16
- メディア: ペーパーバック
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感覚とか、気持ちとか、そういう目にみえないものをデザインしたいんです。
そう語るクリエイターの吉岡徳仁さんの本。彼のデザインはHoney-pop を初めとして、普通では考え付かないような独創的で神秘的でかつシンプルなものが多いですよね。
私の視点からまとめると、この本のポイントは3つです。
- 斬新さは切り口に宿る
- どこにでもある素材を寝かせておくと切り口のきっかけになる
- 何も足さないでも完結できてしまうような素材を見極める
■斬新さは切り口に宿る
ある作品の新しさ、斬新さは、かたちではなく、その切り口に宿ります。ですから自分にとって重要なのは、かたちではなく、あくまで切り口なのです。
「みえないかたち ~感覚をデザインする」(p.14)
モノそのものとか、モノの目に見えるかたちではなく、それを生み出すきっかけとなった視点とか着眼点である「切り口」。その切り口自体をどれだけ新しく斬新なものにできるかが、作品自体の新しさ、斬新さになる。この切り口に斬新さが求められるところは経営コンサルタントとも似ているといえるかもしれません。
アブラハム・マズローはかつて、「手にハンマーしかもっていなければ、なにもかも釘のように見えてしまう」と言っている。
「BCG流 非連続思考法」(p.96)
この切り口が斬新かどうかの度合いは、当たり前すぎても、独創的すぎても受け入れられるのは難しい。そのあたりは広告コピーと似ているといえるでしょう。
コピーの基本は、あくまで「人を納得させる」ことです。そしてそれが、「そりゃそうだ」の常識と「そんなのわかんない」の芸術のあいだにある「そういえばそうだね」の部分なんだ、とは意識しておいたほうがいいと思うのです。
「広告コピーってこう書くんだ!読本」(p.189)
■どこにでもある素材を寝かせておくと切り口のきっかけになる
作品の斬新さに必要な斬新な切り口。それを見つけるきっかけについて吉岡さんはこのようおっしゃっています。
どこにでもあるような素材や技術です。それを自分のなかで寝かせておくと、何かの拍子に、「切り口」を見つけるきっかけになってくれるのです。
「みえないかたち ~感覚をデザインする」(p.34)
ここで重要となってくるのは、そういった素材や技術をどうやって自分にインプットし、寝かせておくか。そのヒントも先ほどと同じく経営コンサルタントに求めてみよう。BCG シニア・アドバイザーの内田和成さんはこのようにおっしゃってます。
ただ、問題意識を持って、興味を持って現象に出会い、情報として見聞する。
その上で、必要な情報などに頭の中だけのチェックをつける。「スパークする思考」(p.63)
頭の中でチェックしただけの記憶というのは、まだネタにもなっていない生煮えの情報でいわば野放しの記憶だ。こうした情報は何もしないし、整理もしないで、放っておく。素材のまま放って置かれるネタの仕掛品のようなものだ。
「スパークする思考」(p.81)
そうしたひらめきとは、一見すると仕事には役立ちそうもない情報が発酵して、あるいは熟成してスパークするものなのだ。
「スパークする思考」(p.92)
重要なのは興味や問題意識です。興味や問題意識を持って日々の生活を送り、実際にいろんな場所に出かけたり、見たり、聞いたり、感じたりする。そうして気になった情報を自分のなかに蓄積し、寝かせることでひらめきが生まれるということです。
■何も足さないでも完結できてしまうような素材を見極める
そうして寝かしておいた素材を実際に切り口のきっかけとして使う際には、下手に手を加えない、何も足さないことが逆にその素材の良さを最大限に出すことにつながります。
ある程度素材やその扱いに自信があると、何も足さないでも完結できてしまう。
「みえないかたち ~感覚をデザインする」(p.107)
この点に関して、吉岡さんは料理を例に出して説明しています。
音や匂いもそうですが、料理もまたデザインに近いものなのではないかとも思います。
「みえないかたち ~感覚をデザインする」(p.106)
ぼくの場合は、日本料理と一緒で、素材の仕込みからはじまっています。実際のデザイン作業の前に、すでにひと手間もふた手間もかけているわけです。
「みえないかたち ~感覚をデザインする」(p.107)
普段私たちが接している料理というどこにでもあるものに関しても、吉岡さんの「デザイン」という上質なフィルターを通して見ると、その類似性がはっきりと認識され、わかりやすく言葉に落とされています。それを可能にさせているのが、先ほどの興味や問題意識であり、切り口なのでしょう。
▼この本から活かしたいこと
- デザインという引き出しを持って、日々を過ごす
- デザインは色々なものにつながることがわかったので、自分のなかの新たな切り口としてデザインを使ってみる
- デザインの最先端に触れる
- 自分で新たな素材を見つけるには、最先端に触れるのが一番。まずは、吉岡さんが監修と会場構成を手がけたカルティエの展覧会「STORY OF…」かな。
目次 - Amazon.co.jp: みえないかたち ~感覚をデザインする: 吉岡 徳仁: 本
1.「かたち」でないものが湧いてくる。
2.「イメージ」にピントを合わせていく。
3.漠然としたイメージが、一気につながる。
4.どこにでもあるような素材を、寝かしておく。
5.不可能を可能にするものが、心を高揚させる。
6.デザインは自由なもの。直前の道ではない。
7.デザインは成長していく。だから面白い。
8.どこにも属さないでいるということ
9.ジャンルより「もの」が先にある。
10.かたちのないものをデザインする。
11.空をきりとって作品にできないものか。
12.眠っている感覚を揺り起こすデザイン。
13.料理もデザインも、仕込みはじっくりと。
14.一歩、ふみこんだメッセージ。
15.まわりの空気を変えてしまうもの。
Invisible Forms [英訳]
- 作者: 吉岡徳仁
- 出版社/メーカー: アクセス・パブリッシング
- 発売日: 2009/04/16
- メディア: ペーパーバック
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