自分を組み換えなおす - 打たれ強くなるための読書術

本との能動的なディスカッションが自分を成長させるのです。


打たれ強くなるための読書術
東郷 雄二

打たれ強くなるための読書術 (ちくま新書)

打たれ強くなるための読書術 (ちくま新書)


知的に打たれ弱くなった最近の若者に危機感を感じた筆者が、「知的に打たれ強くなる」ことを説いた一冊です。この「知的に打たれ弱い症候群」とは、以下のような症状があるとおっしゃっています。

・すぐに解答を欲しがる
・どこかに正解がひとつあると信じている
・解答に至る路をひとつ見つけたらそれで満足してしまう
・問題を解くのは得意でも、問題を発見するのが不得手である
・自分の考えを人に論理的に述べる言語能力が不足してい
(p.11)


ちょっと耳が痛いですが(笑)、こうならないために本書に書かれたような読書術を実践することで、「知的に打たれ強く」なれという主張です。この読書術は、まとめると以下の3点に集約されると思います。

1. 能動的にみずから本に問いかける
2. 本との距離を取って読んだ内容を鵜呑みにしない
3. 必要であれば判断を先送りし、わからない状態に耐える


ここで思い出されるのが、以前のエントリで取り上げた、秋山ゆかりさんの「本をディスカッション・パートナーにする」という言葉。能動的に問いかける行為はもちろんそうですし、相手との距離を取って自分の立場を明確にしたり、そこで結論に急ぎすぎないというのもディスカッションに似ていると言えるでしょう。


そして、問いかけるのは本にたいしてだけではなく、自分にも問いかけるべきだとおっしゃっています。

今まで自分の中にあった思い込みや慣れ親しんだ考え方に新たな問いかけをすることが、「自分を組み換える」ということなのである。能動的読書はこのような自分を組み換える読書でなけばならない。
(p.62)

「自分を組み換える」ということのひとつの意味は、複数の視点からのものの見方を学ぶということでもある。
(p.63)

それまでの自分の知識に本の情報をもとにして問いかけをすることで、複数の視点を持つことができ、自分の幅を広がることができます。その複数の視点から様々な物事を見ることで、新たな発見もあるはずです。


そういった「知的に打たれ強くなる」ためのこの本の中で一番考えさせられたのは下の一文です。

そもそも私たちは何のために本を読むのだろうか。
(p.35)

自分は何のために本を読んでいるんだろうなぁ、と考えてみましたが、そこで頭に浮かんできた答えはこのブログのタイトルでした。
点と点をつなぐ。ご存知の通り、この言葉は、スティーブ・ジョブズが2005年に行ったスタンフォード大学の卒業式でのスピーチで使われた言葉です。

himazu archive - スティーブ・ジョブズのスタンフォードでの卒業式スピーチの日本語訳

先を見通して点をつなぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。だから将来何らかの形で点がつながると信じなければならない。何かを信じなければならない。直感、運命、人生、カルマ、その他何でも。この手法が私を裏切ったことは一度もなく、私の人生に大きな違いをもたらした。


自分にとって読書をするのは、この点を増やす行為であり、別の点とつなげられるような状態にしておく行為なんだろうな、と。ある特定の何かに役立つかどうかは読んでいる時点ではわからないことも多いけれど、ジョブスの言葉の通り、将来何らかの形で点がつながると信じています。